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第八話 覚知

こんばんは


続きです


カテゴリ欄の『小説』に書き溜めていきますので、
そちらからアクセスいただくと読みやすいと思います。

※この小説はフィクションです。
 実在の人物、団体名とは一切関係ありません。

原作
白鯨百一氏作:本土決戦






2035年、消費税はそのとき20%だった。

私たちの世代が肉体労働を嫌ったので、そういった作業は老人や移民が請け負った。

ふらふらしながらゴミや鉄屑を収集する八十代の老人を見るたびに、私は長生きすることを死ぬほど恐れた。

過労死する老人に国は何もしなかったし、介護放棄をした家庭からは、とんでもない悪臭が放たれることもあった。



多くの若者は、最初は馬鹿にしていた移民たちに収入で追い越される羽目になった。

自治体にとって採算の取れない水道事業は自由化され、役所から外国資本に手渡された。




ここからが、本当の地獄の始まりだ。




最初は自由競争により、水道代が安くなるといううったえだったが、

それは最初だけでむしろ自由な企業独占により以前の四倍にも跳ね上がり、日本人独特の「湯船に入る習慣」はなくなった。

週に二回ほどシャワーを浴びられれば贅沢なほうだ。

夏は逆に湯船に水を貯め、二週間くらいはその水で過ごした。



だから皆、汗なんてかきたくなかった。


私は若い子が羨ましいと思った。

私は便利で豊かだった頃を知っている。

少なくとも三十までは、カネが欲しいと思ったが、水が欲しいなんて思いもしなかった。





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いまとなってはそんなこと知らない方が幸せだ。

世界的にも、日本とヨーロッパ諸国の地位はどんどん低下していった。


いま日本のGDPは世界で十五位まで低迷し、五年前に人口も八千万人を切った。


日本だけではなく、世界中どこでも経済の鈍化に悩んでいたが、

それでも中国、インド、フィリピン、インドネシアといった人口の多い国は、次第に世界経済の主役になっていった。



アメリカも強かった。

アメリカには貧しいが力のある庶民がまだたくさんいる。

我々のように一度豊かさを味わって、やる気をなくした庶民とは違うのだ。



私たちは動物として、退化していた。

侮辱されても、悔しいとは思わなくなった。

確かに中国は、二千年代からの急成長の後、そのあまりに雑な経済政策で何度も経済危機を迎え、

そのたびに新興富裕層は没落したが、それでもそのブロックは人口十四億のうち沿岸部の一億にも満たない。

経済危機を迎えても、あえてリスクを負い、エネルギーを出し惜しみしない貧しい人たちがあとからあとから出てきた。




要は、貧しくても生命力に溢れた国民を多く持つ国家が国力を上げていったのだ。




人間の本能を活発に維持するには、ある種の飢えや危機感がどうしても必要だ。

コンピュータに例えれば、いくら新品のソフトを入れても、OSに不具合があれば意味がない。

私たち日本人のOSは退化してしまっていた。


この頃の日本は、「総うつ病社会」といって差し支えなかった。

しかし、韓国や一部ヨーロッパ社会のように、自分たちよりひどい状況に陥っている国をみて、ほっとしていたのだ。



右寄りの人間は、うつ病の特効薬は戦争しかないと喚いていた。

ところが、いまさらどのように、どんな理由で戦争するのか・・・。

Mg兵器の抑止力はまだ幅を利かせていたし、他国領土にでも侵攻しなければ、局地的小競り合いも意味がない。

しかし、戦前の植民地には経済的効果などなかったと、その後の計算で証明されている。


確かに2020年頃の不景気で「昔なら戦争が起こっているはずだ」と囁かれたが、

いまにして思えばすでにあの頃、『国力を掛けた経済戦争』が始まっていたのだ。





日本はその戦争に負けたのだ。





知らない間にはじまり、知らない間に終わり、負けても自分たちは敗戦国だという自覚がないのだから、

本当の戦争よりたちが悪い。


毎年自殺者は四万人、過労死する老人は八千人、介護を放棄された餓死者が三千人、

職があるのに無気力やうつで引きこもる若者が百万人以上。





もう立派な敗戦国じゃないか!


第九話につづく・・・。
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